カルテ庫の中は、真っ暗だった。

どうやら、私のほうが先についてしまったらしい。


照明のスイッチに手を伸ばしたとき、生暖かい何かが、私の腕に触れた。


「ひっ!」


短い声を出すと、俺だよ、という声が耳元でくすくすと笑い声を立てた。


むっとした私の文句が口から発せられる暇もなく、

仲地の腕が、私の体を生き物のように這い始める。


「ちょ、先生!」


「何?」


ねっとりと絡みつくような低音が、私の鼓膜を刺激する。

非常灯以外、何の明かりもない場所は、やけに想像力を活発にさせて、

私は思わず声を漏らした。


それを肯定の意味と捕らえたのか、仲地の行為がエスカレートする。

たまらず、私は、伸ばした手で、照明をONにした。


ちらちらと瞬きしてから、ぼろい蛍光灯が明かりを放つ。


「なんだ、明るい方がいいのか?」


「ちっ、違います!」


私は乱れた服をなおしながら、仲地から距離をとった。