食事の間中、私はずっと不機嫌だった。

いくら友達だからって、勝手にメルアドを教えるなんて。

しかも、よりにもよって、医者なんかに。


「ごめんってば。そんなに怒らないでよ」


「別に、怒ってない」


言葉と感情が一致しないことなんて、よくあるけれど、

この日の私のいらいらは、最低だった。


帰り際、里佳子は真剣な顔で、ごめん、とあやまってくれた。

それから、小さな声で付け足した。


「夏夜が、医者嫌いだってのは、知ってるよ。

あいつら、いっつも女を食い物にしてるし。

既婚者は、浮気ばっかだし。


でもさ、仲地先生は・・・

なんか違う気がしたんだよ。

夏夜が倒れたときの必死な顔見て、思ったんだ。

あ、この人、他の医者とは違う、って」


里佳子は目を伏せる。