すみません、とあやまる前に、ごめん、と仲地が口を開いたので、
私は驚いて彼を見上げた。
「ほら、これやるから、機嫌直してよ」
彼は、箸で器用に魚の身をほぐすと、私の白いご飯の上に乗せる。
「なんですか?これ」
「ん?カレイの煮付け。カレーか、カレイかで、悩んでたんだよ」
里佳子と目が合った瞬間、二人してぷっと吹き出した。
「なんですか、それ。オヤジギャグ?」
里佳子がおかしそうに、お腹を抱えて笑う。
つられて私も、つい、くすくすとわらってしまった。
笑われた仲地は、箸が転げてもおかしい年頃は、過ぎてるんじゃないの?
と軽口を叩きながら、ご飯を口に運ぶ。
彼の箸使いは、とても洗練されていて、思わず目を奪われた。
身をはがされたカレイは、綺麗に骨だけに変身していく。
長い指。
それが、自分の体の中を這いずり回った事を思い出しそうになって、
私は思わずブルッと体をふるわせた。