「いらないなら、俺がもらおうっと」


力なく握られていたスプーンを私の手から奪うと、

仲地は、残り少ないご飯には目もくれず、

カレーのルーをめいいっぱいすくって、自分の口に入れた。


「う~ん、やっぱりうまいな!

カレーも食いたかったんだよな」


おいしそうに口を動かす仲地を見たら、急に理性のたがが、どこかへ飛んでいった。


「ひどい!何するんですか!

ここは、ご飯の量が多くて、ルーが少ないんですよ。

最後にルーをたくさんかけようと思って、調節しながら食べてたのに!」


残してしまおうかと思ったことも忘れ、大声を出す。

フロアに響いた私の声に、みんなが一斉に視線を投げて寄こした。



・・しまった!私の馬鹿っ!



目立たないように隅に座っているのに、

動物園のパンダのように、見世物になってしまった。