仲地が大きな体をかがめて、安っぽい小さな椅子に腰をおろす。

窮屈そうに足を折り曲げる姿が、なんとなくこっけいに見えた。


「二人は、仲がいいの?」


「はい。一緒に働き始めて、もう5年になりますから」


「大橋さんは、お母さんがナースなのに、娘さんはクラークなの?」


「それが、ナースは激務だからって、母に看護学校に行くのを反対されちゃって。

本当は、今からでも、通いたいんですけど。

うちは、母子家庭で、いまだに一緒に住んでるんで母には逆らえないんです」


たわいもない話で二人が盛り上がる間、私は周囲の視線を気にしていた。

医者と事務員が、仕事の場以外で一緒にいると、必ず横槍を入れてくる人間がいる。


ただでさえ、仲地と秘密の関係にある私は、首を掴まれた猫みたいに固まったまま動けない。


「食べないの?藤崎さん」


誰のせいで、食欲が失せたと思ってるんだ。


カレーは、2割ほどしか残ってなかったけれど、

いつもの私なら、簡単に胃袋に収まる量だ。