私は、口に入れたスプーンで喉の奥を押してしまい、

ゴホゴホとむせた。


「藤崎さん、大丈夫?」


手に持ったトレイを、机に置き、私の丸まった背中を親切にさすったのは。


「仲地先生!お疲れ様です」


「あぁ、お疲れ様。ええと・・」


「大橋です。大橋里佳子。その節は、藤崎がお世話になりました」


里佳子は、椅子から立ち上がると、満面の笑みで頭を下げた。


「大橋・・・って、もしかして」


「はい。救急外来の大橋の娘です」


そっか、娘さんも働いてると聞いてたけど、やっぱりと言いながら、

仲地がさわやかに笑った。


「先生、良かったら、一緒に食べませんか?」


「り、里佳子!」


焦る私など、存在もしていないかのように、

里佳子と仲地の間で話がまとまる。