「はい、お待たせ!」


おばちゃんのかけ声とともに、

食堂のカウンターに、勢いよくカレー皿が、のった。


それをトレーの上に移動させて席に着くと、

お弁当を広げた里佳子が、いまや遅しと箸を手にしたまま手招きする。


机の上には、水の入った二つのグラス。

冷えていないのか、水滴もついてない。


「ありがと、お水持ってきてくれて」


「いいから、早く食べようよ。いただきます!」


言うなり、里佳子はウインナーにかじりついた。


患者を相手にしている部署は、どこでも交代で昼を取る。

だから、早く来ようが遅く来ようが、食堂は同じくらいの込み具合のはずなのだが、

実は遅くに来る方が、格段にすいている。


なぜかというと、答えは実にシンプル。

患者を相手にしない部署は、一斉に早めの昼を取るからだ。


患者を相手にしない部署、ってのは、例えば経理課だったり、総務課だったり、

医局だったり・・・、意外にたくさんある。


外来や病棟は、一般の企業で言えば、営業のようなものだ。

営業は金を生む場所で、それ以外の場所は、消費する場所。


病院と言うと、治療する場所しかないと思われがちだが、それは誤解だ。

大勢の人間が働く場所では、営業以外の事務作業が必要になってくる。