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病院に着くと、更衣室にはすでに先客がいた。


「おはよ!

夏夜が私よりも後に来るなんてね」


「うん。起きたのは早かったんだけど、なんか、ぼけてて」


私は、里佳子と顔を合わせないようにして、手早くシャツのボタンをはずした。

なんとなく、顔を合わせづらい。


おはようございます、という朝の挨拶が、いたるところで交わされはじめ、

いつの間にか、更衣室には渋滞ができて、私はげんなりした。


私たちの更衣室は、ロッカーの間に人一人が通り抜けられるほどの空間しかない。

それなのに、ロッカーは、向かい合って並んでいる。

必然的に、向かいの人が着替えている間、相手は身動きもとれず、小さくなっていなくてはならない。


私がいつも朝早くに出勤している理由の一つが、これだ。


私の向かいのロッカーを使っている別の会社の派遣さんが、恨めしそうに私を眺めいてるので、

スカートのホックをかけるのもそこそこに、着替えの場所を譲った。


言い忘れたが、私たちの更衣室、と言った私たちとは、ハケンや請負をさす。

職員とはロッカーの割り当てが別で、彼らは私たちの約二倍の広さがある。


医師は、さらに、その倍の広さだ--。