引き剥がそうとする手がピタリと動きを止めた一瞬を見逃さなかった。




「図星かぁ」
「うるさいっ…」




真っ赤な顔して、潤んだ瞳。



あ。








そろそろ泣きそう、かな…







「立て」
「やだ…」
「良いから立て」
「やだ…」
「襲うぞ」




一言一言に一々反応を示すこいつは面白い。




「立てって」
「………………」




俯伏せてはいるが、きっと、今にも泣きそうな表情を浮かべてるんだろう。

さすがにちょっとからかい過ぎたな、なんて罪悪感に駆られた。



「もう何にもしねーから」



少しだけ、肩の緊張が溶けたのがわかる。
俯せたまま椅子を引いたと思ったら、今度はこいつから手を握ってきた。


「日浦…?」
「…ちょっと待って下さい」

右手でスカートの裾を
きゅっ、と握り。

ゆっくりと息を吐きながら顔を上げる。

薄ら汗ばんだ額と紅潮した頬を見て、沸き上がるどうしようもない加虐心を押さえようと、二・三度深呼吸した。



「先輩…?」



先輩は私の目線に合わせるように腰を屈め




「悪かったな」って、





いつもと違う優しい笑顔を浮かべた。








この笑顔好きだな、なんて思ってたら










「「…………………………」」



感じたのはさっきと同じ熱。






二度目のキスは右頬だった。