「あの…」
「何?」
「…何でも無い、です…」



三上は綺の真正面に座ったのだ。


「言い掛けて止められると、すっげー気になる」


恐らくこちらを見てるのであろう。
上半身に三上の視線を感じながらも、敢えて目を合わせないようにしていた。


「「…………………」」


暫しの無言の後





「………っ…」








左耳に、ひんやりとした感触。




肩を竦めて視線を泳がせ、それでも尚、目を合わせようとしない綺。



「あのさ…」



何て言ったら良いかわかんねーんだけど、って。


モゴモゴ喋りだしたと思ったら






「とりあえず、顔、上げろ」






その熱は、暑さとは別のものだという事はすぐにわかった。










ほんの一瞬だけ触れた唇が、
全てを物語っていたから。