「坂本」

「坂本アミちゃんね、分かった。行ってよし」


彼は掴んだ手を離した。

一気にあたしの手は自由になり、反動で静かに前後に揺れた。



「バイバイ、カワセさん」



彼に向かって軽く微笑んだあと、すぐに鋭く睨んで電車の外へ出た。


電車はゆっくりと音を立てて次の駅へと動き出した。



…変人



ずっと掴まれていたせいか、右の腕に感触が少し残っていた。