会社が終わったら

亜美から連絡が入る。

それまで少し時間がある。

ふと吸い寄せられるように

実麗はその前に立っていた。


お婆さんは実麗を見て

ただ頷いたように見えた。


「あんた、渦の中に

飲み込まれちょるね~。

まあ、座りんしゃいな。

夜はまだまだこれからじゃ」


実麗は素直に壊れそうに

歪んだ椅子に座った。


「わしはの~、ここに

かれこれ10年近くおるかな?

まあ、
いつもいるという訳では
ないがの~」