「半端なことをして生きてた

俺はあれから自分の人生を

一生懸命考える時間が必要だった

いつも立ち寄る赤坂の洋食屋で

上野さんと知り合い

徐々に打ち解けていった。

上野さんは父親を感じさせる

暖かい人だった。

俺の過去も知った上で

料理を勉強してみないか?

と誘ってくれた

資格をとったらいつか

二人で最高のお店をやろうって。

こんな俺でも人を感動させる夢を

持てるかもと真剣に思ったんだ。

そして、赤坂の店で

上野さんの下で一から修業して

2年間イタリア研修にも

同行させてもらった。

俺の尊敬する師匠であり恩人だよ」


「いえいえ、初めて会った時

葵君の底知れない目力に

私は惚れ込んだんですよ。

私の父は腕のいいシェフでしてね

今は南欧に店を構えまして

私に継がせようと教え込み

予てからイタリアに勉強に来い!

と言われてた矢先

葵君に出会って誘ってみたんです

私には息子がいないので

この葵君を息子同様に

育ててみようと思いまして・・・

目に狂いはなかった。

おかげで、念願だった

ここに店を開く事ができました。

彼こそ救世主ですよ!

うちにとって貴重な看板シェフです

私はホールの方が向いてるのでね」


と屈託なく笑った。