古い洋館を思わせる

さほど大きくないが存在感を

醸し出すたたずまいが

懐かしい匂いを感じさせる。


何枚か撮り終え店に戻ると

上野さんが笑顔で迎えてくれた。

ラベンダーとローズマリーの香りが

心地よく辺りを包む。


「お食事はまだですか?」


「はい。まだですが・・」


「じゃあ、取って置きのランチを

ご用意しましょう。

せっかく来て頂いたのですから」


と言って奥に消えた。


それからどのくらいたったのだろう?

時間が止まっていた。

凛は待った。

噂のシェフを・・・?

それとも取って置きのランチを・・・?


そこは、忙しい日常から離れた

異次元の空間にも思えた。


甘く柔かなハーブの香りと

窓から差す光と心地よい陽だまりが

疲れた体を溶かしてゆく・・・


スーッと現実から遠ざかる感覚がして

凛はいつしか

うとうと眠ってしまった。