そこには

ある店の名前と電話番号が

記されていた。


「葵君、ここで

真面目に頑張ってるって。

ずっと連絡してないから

近況は分からないし・・・

私達の間でも

最近は話題にしてないけど

どうするかは

凛さんに任せるから・・」


凛は大きな目で

実麗を見つめて

小さな紙切れを受け取った。


「あり・・がと。」


ガラスを隔てて会っていた葵の

まだ幼さが残る顔を

一生懸命思い出そうとした。


そこには、ついさっき見た光の

面影が浮かぶばかりだった。


一体どんな青年になってるのか・・・

ずっと押し込めてきた感情に

凛の胸は張り裂けそうになった。


ふと気づくと

陽の差し込むテラスから

表参道の木々の木漏れ日が

暖かく二人を包んでいる。


それは

何度目かにやっと巡ってきた

春を予感させる木漏れ日だった。