美恵子の好きだった曲が

教会のボランティアの人達によって

生ギターで奏でられていた。


細い手が胸の上で組まれ

その指に十字架のペンダントが

かけられていた。


美恵子が生涯外す事のなかった

ペンダントだった。


この細い手に何度励まされ

生きる勇気をもらっただろう?


実麗は光と一緒になろうと

決めてから今日まで

触れ合った美恵子の

言葉やしぐさや微笑の

一つ一つを思い出していた。


そのどれもが

消す事のできないかけがえのない

思い出になっていた。


女の子を持たなかった美恵子は

実麗を自分の子のように

思ってくれていた。