実麗には、大人の事情は

わからなかったが

両親の間で起きていることは

何となく雰囲気で感じていた。


実麗が東京に行きたいと

思い出したのは

そういう事情だった。


葵はもっと小さい頃から

母がいなかったのだ。


そして、実の父も失い

どれだけ孤独だったか・・・


大人の事情に巻き込まれたのは

葵も同じだ。


実麗はコーヒーを飲み干して

伝票を持って立ち上がった。


「葵くん、もう少し付き合って!

連れて行きたいところがあるの」


そう言って微笑んだ。