「このお守りはな、

婆がちさい頃から

何かあるたんびにお参りしとった

近所の山神様のじゃ。

よく効くでの~。

光の事もずっと願いに行っておった

じゃから、守ってもろうた。

今度はあんたのことじゃ。

夫婦二人で山形に

帰って来れるように

祈って来たからの。

婆より長生きしてもらわんと

あんたの役目は婆を見送る事じゃよ

頼んだぞ。」


「お母さん、本当に

ありがとうございます。

光の世話もできないこんな体で

側にいてもやれない・・・」


美恵子は大事そうに

お守りを胸に入れながら

涙ぐんだ。


「まあ、良い。

わしはまだ死んでも死ねん。

わしがあんたの代わりに

光を見舞ってくるわさ

安心して待っておればよい。」


お婆ちゃんはひょいと立ち上がり

杖をついて病室を後にした。