苗場はテーブルに置かれた

黒いカバンを見つめて

冷たく言い放った。


「せっかくの申し出だが

これを受け取る訳にはいかない

何故なら今頃実麗は

中絶手術を受けているだろう

どっちの子かわからない子を

世に出すのはその子にとっても

周りの人間にとっても不幸だ。

そして、俺は実麗と明日の夜

日本を離れる。

彼女自身も納得している事だ」


「いや、貴方はわかってない。

実麗は決してその子を

堕したりしない。

母親とはそういうものだ。

貴方はそんな実麗を

妻として受け入れ

父親になる覚悟はないのか?」