そうして少し早めに

家をでた二人が向かったのは

表参道の小さな路地だった。

そこに何か答えがあるような

気がした。

あのお婆さんの笑顔の中に・・・


実麗はお婆さんを探したが

今日は見当たらなかった。


がっかりして引き返そうとした時

いつもの傷だらけの机の上に

石で重しをした小さな紙を見つけた


[・・・蜉蝣の夕を待ち

夏の蝉の春秋を知らぬ・・・


      徒然草]



待っている時間はなかったが

何か意味があるような気がして

実麗は何度もその詩を口ずさんだ。


そして、意を決して

病院に向かった。