モズの兄アムと姉アンも、後を追うようにこの世を去ってしまった。モズの子供たちとアムの子孫たちは、司祭者としての要職を受け継いだ。

そしてシュアは、立派にモズの後継者としての務めを果たすことを誓うのであった。そんなシュアを私は、影ながら見守った。

 ケインの土地。そこではノエルの子孫であるケイン人が、支配していた。彼らは遠い分家でもあり、過去の民族であって、もはや「主」を忘れ、異教の神を崇拝していた。

 さらに追い打ちを駆けるかのように、紀元前一二00年頃から、エーゲ海近郊から移住してきた民族がいた、「パレス人」である。

ラエル人と最も末永く対立する、民族だ。きっと未来永劫にわたって、ラエル人とパレス人の紛争は絶えることなく続くことであろう。

 シュアは、ケインの入り口となるトリコの町をねらった。トリコの住民たちは、モズの今までの奇跡を知っていた。それゆえに、「主」の力を恐れていたようだ。

長雨で増水していたヨルダン川が、シュアたちの行く手を阻んだ。川を渡ることができない。

 その時であった。大地震が没発した。川の水も大きく揺れ動き、波立った。川面の一部が引いて、川底がのぞいた。

川岸の土砂が大量に崩れ、川底に落ちて堆積した。土砂は、川の流れをせき止めた。それは、川の対岸をつなぐ土砂の道となった。

今がチャンスだ。シュアたちは馬に跨り、土砂の上を渡った。対岸を渡り切ったときには増水が始まり、元の姿の川に戻った。

地震が、シュアたちの行く手を導いてくれたのだ。