その後、モズは「主」に誓いをたてた石板を入れる「契約の箱」を作り、天幕の中に安置した。神輿みたいに、かついでいる。

「契約の箱」の錠前に触れると、感電した。乾燥した土地では、静電気が帯電しやすいようだ。パピルスに書いた「聖書」も、入れた。

 噂によるとこの箱の中には、モズが隠した、エジプトの「財宝」のありかを示す地図が納められていると言う。

この箱を開封できる者は、神官と救世主だけだ。さらにこの箱には、絶大な力が秘められているらしい。

全宇宙を支配できるだけの、力があると言う。見たところ、そのようには全然見えない。装飾した、ただの木の箱だ。

 「主」から、その力を手に入れ行使できる者は、「救世主」しかいない。しかも「主」以上の能力を備え、「主」をも服従させるだけの力があるらしい。

その救世主とは、誰なのだ。「主」が認めるだけの、信頼できる人物など、この世にいるだろうか?

 私の聞き違いだろうか、旧式の「契約の箱」がもう一つあると言う。ここにある「箱」は、新式なのか? 

旧式をいつ作った、どこに隠してある? 「アカシック・レコード」と接触しても、「旧式の箱」の場所は分からなかったと、モズは神官たちと語っていた。

 歳月が流れ、モズはピンガ山の頂きで、ケインの土地を眺めながら他界するのであった。ケインの土地に、一歩も足を踏み入れることはなかった。

「天よ耳を傾けよ、私は語ろう。地よ聞け、私の語る言葉を(申命記)」