ある日、シナン山で稲妻が走り雷鳴が轟いた。大地を裂くぐらいの振動を響かせた。「主」が呼んでいる。

モズとシュアと三人の神官は山頂を目指した。山頂についた五人は、座禅を組んで、瞑想にふけった。

湧き出る石油を使って、暖をとった。時に議論も続けた。今後の民たちの行く末を、見いだしたかったのであろう。

 数日後、五人は下山した。モズは「二枚の石の板」を持っていた。玄武岩で作った石板だ。当初、見る角度によっては、青白く光っていたと言う。

つまり、宇宙から飛来した、「石質隕石」(玄武質エコンドライド) だとモズは呟いていた。

 そこに刻まれていたのは、「主」からの戒めと「人」に対する戒めであった。五人が山頂で悟ったものは、「主」の言葉と戒律を、へライ語で残すことだった。石板に、ナイフで条文を刻み込んでいたようだ。

「あなたがたの主は一つである。主の偶像を作ってはならない。七日目を安息日とすること。父と母を敬いなさい。

他人を殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない。偽ってはならない。安易に主の名を唱えるなかれ。隣人の財物を欲するなかれ」

 モズは文章をもって、戒律、立法の原型を整えた。つまり法律書のようなものだ。しかし下山してみると、ラエル人は黄金で作った子牛を偶像崇拝していた。

早くも戒律を破っていたのだ。理性を喪失したモズと神官たちは、「主」の名のもとで多くの民を処刑してしまった。隣人といえども、「主」を崇拝しない者は殺害しても良いようだ。

「この律法の言葉を守り行わない者は、のろわれる(申命記)」

「アーメン(まことに。詩編)」