「主は代々、限りなく統べ治められる(出エジプト記)」

 モズたちは旅を続け、シナン山へと足を向けた。食料の大半を捨ててしまい。残る水も足りなくなってしまった。約一万五千人分の食事など、明日にでも不足する。

 モズはY字型の枝木を拾い、それを両手で握った。それを持って、砂漠の上をフラフラと歩き始めた。

枝の先端が、上下に軽くピクピクと反応している。その下を民たちに掘らせると、水があふれ出てきた。地下水だ。モズは、「水脈占い」の方法を知っていたようだ。

 しかし砂漠の下から湧き出た汚れた水では、ロバや羊や馬たちは飲めても、人間は飲むことはできない。

モズは、バケツなどでそれらの水を集め、砂利や小石などで濾過させた。沸騰させた。さらに、「木炭」を一晩入れた。

あまり美味いとはいえないが、飲めるだけの「水」に変わっていた。「木炭」が、汚れを吸着させたようだ。

 ある湿地帯を訪れたときだ。そこには竹林が茂っていた。モズは一本の竹を伐採した。その割れた筒上の中から、「竹水」が出てきた。

モズは美味しそうに、それを飲み干(ほ)した。民たちも、喜び勇んで、竹を伐採し始めた。

 約一万五千人分だ。竹林はすぐに、喪失してしまった。けれども、数日もすると竹はすぐに成長していた。はて、中近東に竹林があっただろうか。その場所は、極秘とされている。

 エルリの土地に、一行は到着した。ナツメヤシが生い茂り、オアシスに恵まれていた。そこで、ラエル人は一時の安らぎを覚えた。

 食料がない。三月から四月になると、アフリカから越冬してきた「ウズラ」の大群が飛んできた。

それは、ラエル人の天幕の周りで羽根を休めていた。渡り終えたウズラたちは、疲労のあまり捕獲しやすかった。これでしばらくは、食料は確保できた。

 「マナ」という植物に付着する、マナ虫がいた。翌朝には、その分泌する液体が、甘みのあるクリームのような食べ物に変わっていた。炭水化物は体内で全て、糖分に変わる。

それは、脳のエネルギーを維持するために必要な栄養素である。