モズは「燃える石」、「天然アスファルト」のことは知っていたが、「燃える黒い水」の存在は初めてだ。

私の時代になって、それを「石油」と呼んだ。今まで火と言えば、木材や油脂や石炭に頼っていたのに、モズは石油というとてつもない資源を発見したのだ。

 「主」はなぜラエル人に、ケインの土地を与えようとしたのか。私は、その理由が分かったような気がした。

アブーにウルという町を去らせて、地中海に面したケインの土地に導いた。さらに大飢饉から救うために、ラエル人をエジプトへと導いた。

そして今、このシナン山へと招いた。この中近東一帯の下には、きっと石油や金銀ダイヤモンドという財宝が埋蔵されている。これを採掘し利用すれば、莫大な富と権力が得られる。

 これを手に入れれば、世界を支配することだって可能なのだ。しかしラエル人は、この「石油」の価値を見いだすのに時間がかかった。今は、民たちの救出が先決なのだ。

 モズは、「主」の偉大なる力を見せつけられたようだ。モズは数日間、山で座禅を組んでは瞑想にふけった。顔を北に向けて正座した。

磁力は、北と南を通じて巡っている。体内に地球の磁力を通しやすくすることで、「頭寒足熱」の効果が得られる。

頭を冷やして、足を温める。これにより集中力が高まり、頭脳からアルファ波が放出される。リラックスするための、健康法だ。 

 モズは、「アカシック・レコード」と触れてしまったようだ。幼少期、私はモズのひざ枕で横になっていた。その時、神官たちとの会話を聞いたことがある。

「アカシック・レコード」とは、「予知を司る種(たね)」と人とをつなぐ波長帯なのだと、言っていた。その種から、モズは知識や予知能力を授かったらしい。「種」とは、いったい何なのだ?

 時はきた。一人で軍隊と戦うには、当然無力過ぎる。知恵を醸し出すしかない。「主」の奇跡と称して、マジックで国王や軍隊を欺けば、民たちを救えるかもしれない。モズには、それだけの知識と知恵と勇気が備わっていた。