父の犯した罪は、私の家族にまで及んだ。バール将軍は、家に兵隊たちを送るはずだ。私は、母と妹と妻と三人の子供たちをともなって逃亡することを決めた。

 私は、数一00冊以上の巻物を書き記している。これだけ重量のある羊皮紙を、家から持ち出すことは不可能だ。

バール将軍に見つかれば、これらの書物は焼却されるであろう。時間がない、置いていくことを決断した。

 今までの科学技術や商業や法律制度などは、ラエル人が作ったものだ。象形文字に書き換えられて、その文明はエジプト人が作ったものだと、後世の人たちは思うであろう。

私の使命は、ここで終わってしまった。これらの書物をもち出せなかったことに、後悔している。子孫に残すこともできない。持ち出したのは、たった一冊の「聖書」だけだった。

「読書は人の心を豊かにし、会議は人を役立たせる、書くことは人を正確にする(ベーコン)」

「書籍とは青年の食料となり、老人には娯楽となる(キケロ)」