兄たちの行った行為は、「主」の定めた運命に従っただけなのだ。ゼフを奴隷としてエジプトに送り、その後、農林水産大臣として出世させた。

そしてヤブーの家族を、大飢饉から救うためにエジプトに移住させた。食糧にも困窮しない、安全な場所で生活できるように、「主」が取り計らってくれたのだ。ゼフはそう、前向きに考えるように努めた。

 私が思うに、「主」は大飢饉のことを予知していたのであろう。例え「主」でも、未来を予知できるものなのか? もしかするとこれは、「未来」の出来事ではなく、「過去」ですでに起きた出来事なのではないだろうか。

「エジプトの国中で最良のものが、あなたたちのものになる(創世記)」 

 神官たちは、太陽の周りを回る一二個の惑星に見立てて、「士族」を提案した。ヤブーの息子たちからベン、シメン、レレ、ユダ、イサル、ゼルン、ガカ、アスル、ダノン、アフタ、ゼフ、ミールによる一二部族が組織された。

 けれども、ゼフは「主」から選ばれた僕(太陽)なので、部族から外された。一方レレは、司祭者としての要職に就いたために、これも部族から外された。

その代わり、ゼフの息子ナセとイムが部族長に就任することになった。ここに、一二士族が誕生した。

 数年後、ヤブーは天寿を全うし、とある洞穴に埋葬されるのであった。

 ゼフの才能は、エジプトに繁栄をもたらした。ゼフだけではない、ゼフの兄弟たちが、エジプトの文明をさらに加速させた。

兄たちは商売にも優れ、隣国との交易をさらに深めた。造船技術を高め、「地中海」一帯に船舶を走らせた。

ナイル川を下りインド洋を抜け、諸外国の大陸文化にも影響を与えた。時に、黄金の国「ジパング」に漂着した者もいたらしい。

 それは、国王バパの財政を豊かにすることにつながった。土地を区画し国有化する。農地を小作人に耕作させ、その収益の一部を税金として徴収した。

納税制度を確立させた。ゼフ兄弟たちの功績は、エジプトの民にも多くの利益をもたらすのであった。