四男のユダは、ゼフの前に歩み出た。「私たちが身代わりとなって、奴隷になります」と、泣きながらに嘆願した。しかしゼフは、認めなかった。

 ユダは、一一番目の弟ゼフを、奴隷商人に売り渡したことを語りだした。その時兄たちは、父ヤブーに、「ゼフは猛獣に喰い殺された」と偽って話した。

ヤブーは、最愛の息子の死に悲しんだ。心から胸を痛めていた。兄たちは、大変な親不孝をしたのだと後悔した。

 数年後、兄たちはゼフを売り払ったことを、父ヤブーに話した。父は、息子ゼフがまだ生きていることに喜びを感じた。

勇気をもって告白してくれた息子たちに、少なくともその罪を許した。兄たちはそれ以来、「主」の前でひれ伏し懺悔するようになった。悔い改めた。

 そして今、ヤブーは一二番目の息子ミールまでも失おうとしている。父をこれ以上悲しませたくはない。兄たちは、自分たちの命に代えてでも、末っ子ミールを守り抜こうと決意している。

「過ちを改めない、これ過ちという(論語)」

「幻想は短く、後悔は長い(シラー)」

 その話を聞いたゼフは、兄たちの行為を許した。兄たちの前で、自分の正体を明かした。今までの苦難の話を、聞かせた。一二人の兄弟が再会し、泣きながら抱き締め合った。

 ゼフはケインの土地から、父ヤブーと家族全員と神官たちをエジプトに呼び寄せた。ゼフは国王に嘆願し、エジプトの土地で、家族全員で暮らせることを認めてもらった。また、知り合いのラエル人も呼び寄せた。