ゼフの夢占いは的中した。干ばつに見舞われ、大飢饉が襲った。中近東一帯は食料難に陥ったが、穀物の備蓄に備えていたエジプトだけは救われた。

周辺の国々や民たちは、食料を求めてエジプトに集まり始めた。「先物取引」の相場が、高騰した。ゼフが考案した、商売だ。会計帳簿、経理を担当していた才能が発揮された。

 その中に、一0人のゼフの兄たちがいた。彼らは、弟ゼフの前にひれ伏して、食料の提供を求めた。夢占いの通り、ゼフにひれ伏していたのだ。兄たちは、大臣が弟のゼフであることに気がついていない。

当然であろう。奴隷として売ったのに、その弟が、いつの間にかエジプトで大出世しているなどと、だれが思うであろうか。

 ゼフは、わざと兄たちを他国から偵察にやってきたスパイと看做し、疑いの目で見た。三男の兄レレを人質にとり、そして要求した。

「次に来るときは、末っ子の弟を人質にする」と命じた。

 翌年、兄たちは一二番目の弟ミールを連れて、ゼフの前に現れた。ゼフは、ミールの手提げ袋に「銀の杯」を密かに隠し入れた。

盗みの容疑でミールを捕まえ、兄たちを追い出した後、自分の側に置きたかったようだ。