途中、大きな火山島の横を通り過ぎた。炎熱の島、火口からは噴煙を巻き上げ、溶岩が流れている。遠方とはいえ、硫黄の異臭が漂っている。

とても人が居住できる環境ではない。けれども、この火山が数千年後には、私たちの子孫にとんでもない奇跡をもたらすとは、だれも想像できなかったことであろう。

 七月。私は、やっと平坦な陸地を見つけた。面積的には、決して広いとは言えないが、その大地に漂着した。

少なくとも高台であって、決して山といえるほどの高さではない。すぐに下船して、土の臭いをかぎまくった。こんなに、土が恋しいとは思わなかった。私が生存できたのも、「主」のおかげである。私は、「主」を祝福した。

 一0月。海の水も引き、麓の地表面が露出した。一二月、冬なのに、ハトは「オリーブの葉」をくわえて戻ってきた。近くに温泉地帯があった。

そこに、樹木や草木があるようだ。以来、ハトとオリーブの葉は、私の家では「平和」を象徴するようになった。

 年が明け、二月。大地はすっかり乾き、私は下界へと足を広めた。近くに大航海時代、植民地とした国があるはずだ。

アトラス大陸から独立した、都市国家だ。そこには、正四角錐型の巨大な三つの建造物が建立しているらしい。

アトラス人の子孫は、その建造物の中に潜んで、この大災害から免れているはずだ。その建造物の内部には、大洪水に備えて「方舟」が隠されていると耳にした。

 それとも、あの高波に呑み込まれて、その建造物も砂の中に埋め尽くされたのかもしれない。海面が、六0メートル以上も上昇しているはずだ。

埋没しても、不思議ではない。彼らも、隕石の激突を予言していたはずだ。