船は南からきた巨大な高波に押し流されて、北に向かったはずだ。だが不思議なことに、そこは寒くはない。まるで、赤道の近くにいるみたいに温暖だ。

私の船は、北から南へと下る海流に乗って流されている。海流に流されるだけで、こんな短期間で私の船が、赤道に近づくことなど、あり得ない。

 陸地で生活してみて分かったことであるが、私の計算に間違いがなければ、地球の地軸が数度ずれていた。

南極に落下した隕石が地球の地軸を揺れ動かし、大西洋の緯度三0度が二五度になり、反対側の太平洋の緯度三0度が三五度に移動していた。

一晩にして五度もずれ込んだのだ。多分、温暖だった南極大陸の全土が、氷河に覆われるはずだ。

 磁極も変化した。海鳥たちが、数百羽以上も海面に落下するのを思い出した。海鳥たちは磁力を頼りに方向を感知して、飛び回っている。

海鳥が落下すると言うことは、磁極に異変が生じたということだ。真北は、「こと座のベガ」だった。それが、突如として「北極星」に変わってしまった。地軸がまた、移動したのだ。

 「シベリア」と呼ばれた国では、人間とマンモスが折り重なるようにして、瞬時にして一緒になって死んだという、そんな夢を見た。

その時代に生きていたマンモスは、やや温暖な地帯で、樹木に満ち足りた環境で生活していた。一日に、数十キロリットルの草を食料とする動物である。それが、突然の寒波の襲来に見舞われたのだ。また小氷河期が訪れた。

 「水」は、凍ると体積が膨張する。しかしマンモスの体内では、水分も血液も膨張はしなかった。瞬時にして、体内まで冷凍されたからである。体内の水分や血液が膨張する暇もなく、凍死した。

一瞬にして超低気圧・超低温・超重力の環境下にさらされ、瞬間凍結したのだ。一呼吸もできずに、即死したはずだ。