私は、船大工だ。巨大な船を作りそれで逃げることを考えた。ガソリン機関ではなく、木造の「帆船」を設計した。

ガソリン機関だと、燃料が無くなれば航海はできない。帆船に決めた。と言っても、帆船しか建造できない。幸いにも、数人の友人たちが「主」を信じて、巨大な船舶を数隻、建造していた。仲間がいるだけでも、心強い。

 私は、飼育している家畜やペットたちを乗せた。そのため、大量の食料の確保を必要とした。船内でも、水耕栽培ができる施設を併設した。そして、その時が訪れた。

 その年の二月。巨大な隕石は、「南極大陸」に落下した。巨大な波が、私の住む島にも予想通り押し寄せてきた。その数日前には、「主」が住むと言われた禁断の山が噴火を始めた。それは「主」からの報せだ。

事前に噴火していなかったら、私は船に乗らなかったことであろう。数箇所で噴火が発生した。それだけでも、島が沈むだけの要因は整っていた。爆発により、島の地盤に巨大な空洞ができた。それはもろくも、崩壊した。

 私は帆を上げ、急いで遠洋に赴いた。帆を降ろし船首の向きを、波がくる方角に垂直に向けた。つまり南に向けたのだ。高波から回避するには、この方法しかない。

 重い舵を操って、数百メートルの高波と悪戦苦闘しながら乗り越えた。苦難の末、沈没だけは免れた。

負傷者は、何人かはでたが命に別状はない。船も多少の被害を受けたが、修理はどうにかできる。私たちが生存できる場所は、もうこの船しかないのだ。

それでも全員無事なだけ、幸いであろう。きっと、「主」に守られていたのに違いない。