さらに、レモンに刺した亜鉛と銅から「乾電池」が作られるようになった。炭素棒を使用した、乾電池も作られた。電気を利用した、メッキ(鉄の表面を銅などの被膜で覆うこと)技術までをも開発した。

 気球がさらに進化して、空飛ぶ飛行船も製作された。エンジン機関から、反重力飛行艇も開発された。

私の時代でもまだ実験段階だったが、将来、天空を駆け回り、宇宙にも飛び立つ日が近いかもしれない。私は、月の隣にあるあの「赤い星」へ旅行してみたい。

 そんな悪しき風潮が続く中で、アダの直系の子孫、私ノエルが誕生した。父は木材で造る造船職人だ。私もまた、それを受け継いだ。長男は、家具職人となった。

 神官の一人に、私の従兄弟がいる。「主」の言葉を聞くことができる、唯一の逸材だ。私も、その一人だ。三人の神官たちは、水晶からレンズを作り、何枚も重ねることで遠方を見ることができる、「望遠鏡」を開発した。

 天文学に優れた神官たちは、火星の隣に、異様なゆらめきがある光を見いだした。動く惑星、「巨大な隕石」と言っていた。

隕石が落下すると、この小さな島は、大波に呑まれて海中に沈むであろうと予言された。私も、得体の知れない波長帯を通して、そのような夢を見た。この波長は、どこかに「本体」があってそこから発しているらしい。

 私と家族は、神官たちの言葉を信じた。だが、国王や民たちは信じなかった。宇宙からの飛来物など、考えられなかったからだ。

例え落下しても、「主」に祈れば、きっと助けてくれると信じていた。民たちは、いつも通りの生活と快楽にふけっていた。