「オリオンを 九月の深夜 見るかなし(相馬遷子)」

 二一00年代。人類は、不可能と思えるこの「移住計画」を実行した。数百年以上もかけて、子孫たちにその夢を託すことにした。

アメリカのNASA(アメリカ国際宇宙局)を中心に、世界各国でその計画は進められた。途方もない予算を世界中からかき集め、各国に研究施設が建設された。

 ユダ人には、財政力と科学技術に優れた学者たちが研究に携わった。アフリカ人は、その体力を買われて、火星での作業従事者として選ばれた。

パレス人(イラム教徒)は、多くの宇宙飛行士を排出した。各国のクリストス教徒は、基礎研究を何度も何度も繰り返した。

 私の母国日本では、火星に適した「核融合」の研究が進められた。原子力発電は、「核分裂」によって電気が作られた。

核分裂は有害な放射性廃棄物を排出させるが、核融合装置だと廃棄物は発生しない。クリーンなエネルギーなのだ。強大で安全性の高い、電気エネルギーが得られる。これ、なくして火星での生活は不可能であろう。

 ただし安全性は絶対ではない。危険性も秘めている。今までも、何度も爆発事故を起こしている。時には、事故をひた隠しする愚かな電力会社もあった。少しは、失敗学を学べ。
 インド人(ヒンズー教徒)の数学能力は、パソコン操作に生かされた。ウルトラ級コンピューターが、開発された。

当然、サイバーテロや悪質な犯罪者たちの行為は予想された。現実にそれは何度も起きた。取り締まりも大変だった。ご免、私も一回だけ国防総省(ペンタゴン。正五角形の意味)に侵入したことがある。

 ヨーロッパ連合(EU)では、人工衛星の開発を任され次々と打ち上げられた。火星の周回軌道を回って観測させた。

地表にも無人の探査車ローパーを送り、さらなる観測データを送り続けた。地球と火星との間に、「宇宙ステーション」も多数建設された。実績のある、ロシアが中心となって開発を担った。