そんな低い重力の環境下では、いずれ遺伝子が書き換えられた別個の生命体が出現する可能性がある。火星の回転がもう少し早くなれば、重力が大きくなるかもしれない。

回転させずに人工的に重力を作り出す方法は、まだ研究の段階である。私の時代になっても、「重力増幅装置」は開発されなかった。

 仮に火星の回転速度が早くなった場合、一日が二四時間では済まされない。一日が二0時間、一八時間、一二時間になるかもしれない。それでは体内時計に異常をきたし、睡眠時間が狂い自律神経を崩してしまうはずだ。

 その昔、地球もまた火星と同じように二分の一の大きさの時代があった。巨大な隕石の衝突によって、地球は巨大化し今の大きさになった。この大きさだからこそ、今の重力場が保たれ、生物が誕生し生存できるのだ。

 火星には二つの衛星がある。フォボス(恐怖)とダイモス(恐慌)だ。人類は月の潮汐作用(月及び太陽の引力で、海面水位が上昇・下降すること)によって、生活が成り立っているといっても過言ではない。