私はタルコス。紀元四0年~一二0年まで生きた。ローマで、偉大な人物を扱った伝記作家である。シュメール、バビロニア、ペルシャ、ギリシャ、エジプト、ローマ帝国などを書きつづった。

そして、ユダ人の歴史に力点を置いた「聖書」が完成した。自分では力作だと自負しているが、ローマの出版社からは「こんなものは売れない」と、拒否されてしまった。私の作家生命もここまでか。

 私はとうとう妻と、離婚した。偉大な哲学者ソクラとは、私は違う。支払うだけの慰謝料はないが、養育費だけは毎月真面目に支払おう。

もう女性は、コリゴリだ。女房はいらない、身の回りを世話してくれる「家政婦」が欲しい。

 頭はツルツルで、腹は出ている、胃腸が悪いので息が臭い、ビールにタバコは大好きだ。こんな醜男でも、若くて奇麗な女性マリオンと恋に陥った。エサル大学文学部の学生だ。

 ローマ国立図書館に通っていて、知り合った、マリオンは、自分の執筆活動には快く協力してくれた。

例え貧乏でも、マリオンは支援してくれた。苦労をともにしてくれた。私は、マリオンに安物のエンゲージリング(婚約指輪)を贈った。

「男の愛はその生活の一部であるが、女の愛はその全部である(バイロン)」