リヤは古来から伝わる、天文学、気象学を学んでいた。太陽に多くの黒点が現れた。一一年周期で、干ばつが訪れると予想していた。

それが過ぎれば、雷雨が降り注ぐはずだ。月の周りに虹がかかっている。西から強風が吹いている、明日は天気が荒れる。

観天望気だ。リヤは行動を起こし、ハブ国王の前に姿を現した。雨乞の儀式をすると、断言した。

 リヤは、マネの丘の上に祭壇を築き、そこに一本の鉄棒を立てた。木材を交互に四角に組み、ある「透明な液体」を周囲にまいた。

リヤは、ハブ国王やパレス人の祈祷師たちの前で祈りをささげた。しばらくすると、湿った空気が周囲に漂った。天には黒雲が立ち込めてきた。入道雲、積乱雲だ。予想通り天気が崩れかけている。

 暗くなった空に、稲妻が走った。雷鳴がとどろいた。リヤは、祭壇から下りて背を低くした。リヤの関節の節々に、激痛が走った。雨が近い証拠だ。

痛みをこらえながら、じっと伏せていた。至るところで、雷が光っている。一個の光る巨大な球体が、飛んできた。

雷球がその鉄棒に落雷した。鉄棒は避雷針だった。リヤは、雷を故意に引き寄せたのだ。

 しかもその液体は、青白い炎を上げて燃え上がった。純度の高い、麦から作ったリキュール(蒸留酒)だ。

リヤは精神安定剤の薬として、果実を混ぜて、常に瓢箪の中に入れて持ち歩いていた。妻からは、ただの飲兵衛だと言われていた。

 ハブ国王や祈祷師たちは落雷に驚いて、その場を退散してしまった。雨が降りだし始めた。パレスの神にもできなかったことを、ラエル人の崇拝する「主」が、その奇跡を実現させたのだ。

リヤは、パレスの祈祷師たちを殺害するようにと、ラエルの民たちに命じた。民たちはリヤに扇動させられて、パレスの祈祷師たちを谷底に落として虐殺するのであった。