民たちの苦しみを顧みず、王族や貴族、軍部だけが潤っていた。重税に耐え兼ねた民たちは、日増しに国王たちへの怒りを覚えはじめた。

結束して、反逆を企む者たちが現れた。けれども、非弱な民たちは、内乱を起こしてもすぐ軍隊によって鎮圧されてしまった。

 ベル王妃は、干ばつの原因はラエルの神によるものだと、断定した。ベル王妃は、ラエルの司祭者たちを虐殺した。

その後、パレスの祈祷師たちに雨乞をさせたが、降ることはなかった。パレスの神でも、雨を降らせることはできなかったようだ。

 ある日、リヤの息子が狭心症の発作で倒れた。息がない、心拍数が低い。リヤは、心肺蘇生法を試みた。下あごを押し上げ、後頭部を曲げた。

これにより、空気の通りをよくするための気道を確保した。「後頭部後屈顎先挙上法」である。

口から息を二回、吹き込んだ(口対口人工呼吸法)。口元から呼吸がないと判断し、心臓マッサージを一五回施した。この心臓マッサージと人工呼吸を、何度も繰り返した。

 素早い応急処置により、最愛の息子はかろうじて生き返った。急死の一生を得たようだ。リヤは港町でイカ墨を手に入れ、火であぶり粉末にして飲ませた。秘伝の心臓病薬だ。後は安静にして、寝かすしか他に方法はない。