「ゆかり!!!」
いつの間にか、踏み切りの遮断機が上がっていた。
誰かが私を呼んだから、その声で私は我に返った。
「おい!ゆかり」
幻想?
踏み切りの向こう側に、たっくんがいた。
いるわけないじゃん。
さっき別れたばっかなのに。
「ゆかり……」
立ち止まる私の腕を引っ張る。
幻想じゃない。
たっくんだった。
「家まで送らせてくれよ。頼む……」
私の腕を掴んだまま頭を下げて、私にそう言ったたっくん。
「送ってくれるの?」
たっくんは、手を繋いでくれた。
何度も何度も繋いだ手。
ゆっくりゆっくり歩いた。
普通に歩けば、15分で家に着く。