「今日、たっくんから電話があったんだ」



煮物を頬張った先生は、思い出したようにそう言って、慌ててお茶を飲んだ。



「たっくん、泣いてたんだよ。もうだめかもって」




「え?!今日、ゆかりからも電話あった。同じ内容…… たっくんとだめかも知れないって。今日の夜時間あったらうちに来るって言ってたんだけど、まだ連絡ないんだよね」




私と先生は充電中の携帯電話に視線を移す。





「結局は、本人同士が決めることだからな。別れちゃいけないふたりだと思うけど、俺達にはどうすることもできねぇんだよな」




先生の言う通りだ。



私が何を言っても、ゆかりの心から不安が消えることはない。


離れてしまったように見えるたっくんの心は、私にはどうすることもできない。




「忙しいのはわかる。いっぱいいっぱいなのもわかる。……でもなぁ、ちょっと今のたっくんはおかしいよ。好きかどうかわからないって言ったんだ」




私は、言葉を失った。


あのたっくんがそんなことを言うなんて。



いつもゆかりのことを大事にしていたし、ストレートに気持ちを伝え合うカップルだった。


たっくんは、先生に憧れていて早く先生のような男になりたいっていつも言っていた。




たっくんが言っていた『先生のような男』っていうのは……彼女を大切にできる男ってことだよね?



彼女のことをしっかり守れる男になりたいって思っていたんだよね。