翌日、病院で胃カメラを飲んだ。



細かい検査結果は来週にならないとわからないけど、いちおう異常は見つからなかったのでホッとした。



俺は長生きしなきゃいけないんだ。


直の為、俺の為……




だって、あんなに最高の奥さんがいるのに、早く死んじゃったらもったいないだろ。




病院から学校へ向かう途中の車の中で携帯が鳴った。



路肩に車を停め、電話に出た。




「もしもし」



『……もしもし、先生。助けてよ』




名前を名乗らなくても誰だかわかるのは、直以外では、お前くらいだよ。



「はぁ、たっくんか。やっと俺に頼ってくれたな」



俺は待っていた。



いつからか、自分の教え子のようにかわいい存在になっていた。




『先生、俺……もう自分がわかんねぇんだ。これからどうしたいのか、何をすればいいのか』




たっくんは泣いていた。



俺は昨日自分の社会人1年目のことを思い出していたこともあり、たっくんの気持ちが痛いくらいよくわかった。