「先生、1年目そんなに辛かった?」




「そうだな。何もかも初めてで……」




直は、お風呂の壁にハートマークを書いた。



そのハートの中に『スキ』と書こうとする直をぎゅっと抱きしめた。




直は、『スキ』と書き終えると、俺の鼻に鼻をくっつけて微笑んだ。





「教師1年目の先生、見てみたかったな」




「見せたくないよ。かっこ悪いもん……」




俺の教師1年目か……


懐かしい。






◆◆◆◆◆◆◆◆






今日から俺は高校教師として働き始める。



新しいスーツを着て、深呼吸をする。



1年目は副担任と体育の担当、陸上部の顧問。



何もかもが初めてで新鮮だった。




新しい校舎。


俺のデスク。


靴箱。






『新垣先生』と呼ばれること……




俺、教師になったんだ。


夢だった教師になれたんだ。