「昨日、金森がここへ来たよ。もう一度実習に来たいなんて言い出すから、もう二度と来るなと言っておいた。ははは」


喜多先生は、大きな口を開けて笑った。




「そう思ってくれただけでも良かったです。でも、もったいない気がしますね。貴重な実習期間を半分以上無駄にした。それに気付いてくれて嬉しいけど」




「あの日、ここであんなに泣いていたのは、生徒からきついことを言われたからじゃなく、自分自身が許せなかったんだと思う。だから、あの日からアイツは変わった。今さらもういいよって思ってる生徒も多いと思うけどな」




金森は、クラスの生徒全員のフルネームを覚えた。



バスケの授業がしたいと俺に頼んで来たので、あの日から体育の授業はバスケばかりだった。




金森は景子って子のことを吹っ切る為、自分自身を変える為に、バスケを熱心に教えているように見えた。




過去は変えられない。


過去には戻ることができない。




金森が傷ついた高校時代へも戻れない。


戻りたくても実習初日にも戻れない。



どれだけ後悔しても、山村を傷つけたことは消せない。




過去は変えられないが、その後の人生は変えられる。



『今』、そして『未来』は……変えられるんだと信じたい。