焼肉屋さんで、お肉を注文してすぐに先生は胃を押さえた。



「どうしたの?先生、胃が痛い?」



「いや、痛いってわけじゃないんだけど、ちょっと朝から重苦しい感じ」




先生はみぞおち辺りを人差し指で押さえながら、苦笑いを浮かべた。



「もう!!それなら焼肉食べない方がいいよ。早く言ってくれたらいいのに。先生のばか……」




丈夫な先生だから、胃が痛いなんて聞くと心配になる。


やっぱり相当ストレスがあったんだね。



「もう大丈夫だから。今日は嬉しくてさ!!直とお祝いしたかったんだ」



何も言えなくなるくらい無邪気な笑顔で私を見つめる先生。



お肉の追加注文はなしだよって言うと、先生は残念そうにメニューを見つめた。




何度か来たことのある焼肉屋さん。


結婚前に来た時に、お店のおかみさんに『奥さん』って呼ばれて赤面したことがあった。



食べ終わった先生は、また胃を押さえた。





「先生、本当に大丈夫?しばらく胃に優しい食事にしよう」



「ああ。明日からは気を付けるよ」




先生は、眉間にしわを寄せながら笑顔を作った。


その笑顔が、なんだかとても無理しているように見えて、私はどうしようもなく不安になった。




どうしてだろう。


先生が遠くに感じた。



無理しないで。


先生……

弱音吐いていいんだよ。