「実習が決まって、私は景子に電話をかけた。新垣先生のクラスに決まったよって。景子は教師になる夢をあきらめていたんです。だから私は優越感でいっぱいだった。でも、その時景子に言われた。“どうせあんたなんか新垣先生に相手にされないよ”って。だから、私は何とか新垣先生に近付きたくて、必死だった。こっそり先生の後ろ姿とか隠し撮りして、景子に送ったりしたんです。みんなからもらった写真も、景子に見せる為だった。景子に負けたくなかった。それだけの為に…… 私はせっかく出会えたみんなのことを利用した…… ごめんなさい」





俺は鈍感な方だけど、本当に俺のことを好きだと思ってくれているかどうかくらいはわかる。


金森に同情できなかったのは、金森が本当に俺を好きだとは思えなかったからかも知れない。



一緒にいても、金森の心は見えなかった。





俺に憧れて、俺に会いたくて、今まで頑張ってきたと言われても、何だか嘘くさく思えた。




全部わかった。



これで……





金森が見ていたのは、俺じゃない。


その“景子”っていう子。





高校時代にプライドをズタズタにされた相手への復讐。



それだけだったんだ。





「せっかくこのクラスに来たんだから、もう少しは俺達のことも見てよ。あと少ししかないんだからさ」




佐藤の言葉で、教室の中の空気がやわらかくなった。


何人かの生徒が首を縦に振って頷いた。