「ごめんなさい。山村さん…… 私はあなたが憎くて、あなたが新垣先生に嫌われればいいと思った。だから、自宅の番号を教えた。本当にごめんなさい」





金森は泣き崩れるようにして、教卓に顔をくっつけた。



でも、泣きたいのは山村だ。


泣くのは金森じゃないだろ……



「ごめ……んなさい……」




俺は口を出さず、ただ見守っていた。



どういう方向に進むのか検討もつかなかった。





「私…… 本当は教師になりたくなかった」





ああ、そうか。


そうだろうな。


それで納得した。




今までのいろんな言動に説明がつく。





「景子は、高校時代新垣先生のことが好きだった。新垣先生も私よりも景子のことを気に入っていた。景子は教師になっていつかこの高校に戻ってくるんだって私に言った。だから、私は景子に負けたくなくて、同じように教師を目指すことにした」





ちょっと……待てよ。


俺、その“景子”って子のこと覚えてないんだけど……


俺が気に入ってたとか……ありえないし。




1番前の男子がニヤっと笑って俺を見た。


俺は小首をかしげて、困った顔をした。