「俺が当時、直と出会っていたら、俺は直のことを1番に考えたと思う。今だから言えるけどな。その頃は、余裕もなかったし、自信もなかった。実際に直と付き合っていたとしたら、今の中田のように悩ませていたかも知れない。でも、どうしても失いたくない女なら、大事にしなきゃ」




ゆかりがニヤニヤしながら、頷いていた。


ちょっと涙目になっちゃったのは私だけじゃなく、ゆかりも……



「どうしても失いたくない女……かぁ。先生、かっこよすぎだよ」





「そうか? 一生に何度もそんな出会いってないんだ。だから、たっくんは中田を失ったら絶対後悔する。今は、周りが見えていない上に、付き合いや遊びも楽しいんだと思うけど、急に中田が消えたらアイツはひとりになるよ。はっきり言って、たっくんはおバカさんだし…… 中田がしっかり操縦してやらないとどんどんダメになってくぞ」





先生は高校時代のホームルームを思わせる話し方だった。


昔からそうだった。


真剣な話をしている時でも、重くならない。


聞いている生徒の気が重くならない話し方をする。




今も、真剣な話をしているのに、時々笑いがこぼれるし、ゆかりはとても明るい表情をしていた。