「先生、もうすぐ帰ってくるって」
自然と顔がニヤけてしまう私を見て、ゆかりもニヤっと笑った。
「待ってるのも毎日寂しいでしょ?」
ゆかりは時計を見上げてた。
「毎日会えるから寂しくないって思ってたけど、人間ってどんどんぜいたくになるんだね。帰りが遅いのは寂しい。だから、ゆかりが寂しい気持ちもすごくわかる」
「心が寂しいんだよね。今は……たっくんの心が遠いって気がして。きっと直と先生ならこんなことはないんだろうな」
私は、何も言えないままゆかりの寂しそうな顔を見つめた。
お皿にパエリアを取り分け、グラスにジュースを注ぎ、先生を待った。
「おはようのチューとかお帰りのチューとか毎日してるの?」
ゆかりの質問に私の顔は真っ赤になったらしく、もう答えなくていいよってゆかりは笑った。