国語担当の教育実習の女の子が、俺に近付いて来た。



「金森さんの憧れの先生って新垣先生なんですよね?さっき、聞いちゃいました」



どうしてみんなに言うんだろう。


俺には理解できなかった。


昔は俺に憧れていてくれたんだと思うが、今は……話題作りのように思えて仕方がない。


「何年も前の話だよ。昔は俺も若かったから」



俺は助けを求めるように、喜多先生に目を合わせた。



「そうそう。新垣先生も今では奥さん一筋だからねぇ」



喜多先生は、そう言いながら俺の肩に手を回した。



「そうなんですか?金森さんが、実習終わったらみんなで新垣先生の家に行こうって言ってましたよ~」



恐るべし……金森。


2人きりでデートを断ったから、今度はみんなで……?



里田が俺の家に強引に来る計画を立てたことを思い出した。


あの時は、直も一緒に来たから、内心俺は嬉しかったっけ。




「新婚家庭にお邪魔するのはさすがに迷惑だろ!お前らもいい大人なんだからそれくらいわかるだろ?」



喜多先生が冗談っぽくそう言うと、そこにいた数人が、そうだよね、と同意した。