「どうしたの?先生。悩んでるの?」



俺の顔を覗き込んで、何やら嬉しそうな笑みを浮かべていた。



「俺とのデートをそこまで夢見てくれていたってことはありがたい。教師としての俺は、ちょっと悩んでる。お疲れ様ってことで、1回くらい食事に行っても良いかなとも思ったりもする。でも、男としての俺がそれを許さないんだ」




教官室の前で立ち止まる。



首をかしげる金森にしっかり伝えないと。




「俺は妻のこと心から愛してる。俺は心配かけたくないし、泣かせたくない。俺に憧れていてくれたことは嬉しいし、ここで再会できたことも嬉しいよ。だから、せっかく俺のクラスの担当になったんだし、2週間一緒に教師として頑張って欲しい」



うまく言えないけど。



男としてじゃなく、俺を『教師』として見て欲しい。



憧れてくれるなら、教師の先輩として憧れて欲しい。





「わかりました。奥さんにベタ惚れってことですね!!」




お、わかってくれたのか?





普段はあまり体育教官室には来ない喜多先生が、教官室から出て来て、俺を見てニヤっと笑った。



どうやら会話を聞かれていたようだ。




「じゃ、歓迎会までに今日の分のレポート書いておけよ!」